2009/06/30

// 彼は熱きロマンチスト





 彼は熱きロマンチスト 






ひとりの青年がいて

彼は熱きロマンチスト

鍬にもたれて夢を見ていた

洗いざらしの白いシャツ

真夏の原野に光っていた









赤いレッテルがあった

貼られた人は町を逃れた

正義と理想で生きられる土地

そこは見知らぬ未開の地



彼は熱き開拓者

鍬にもたれて夢を見ていた







その後の彼を知る人はない


あれからたった数十年

彼は どこへ行ったのだろう















// 隠者はどこへ・・・・





 隠 者 は ど こ へ 



権威 権力 望まない

あなたは隠者

竹林の庵

茶碗酒で月を詠む

「 呑酔が 木の根 枕の 月見かな 」

竹林も消え 庵も無く あなたもいない


隠者はどこへ

隠者はどこへ

月ばかりが 冴え冴えと







世が世であれば近寄れぬ

あなたは隠者

すすき野原の掘っ立て小屋

涼しい顔で貧を詠む

「 猫 すずめ 春の宴ぞ わらび粥 」


すすき野原は跡形もなく

あなたはどこにも どこにもいない


隠者はどこへ

隠者はどこへ

月ばかりが 冴え冴えと


隠者はどこへ 隠者はどこへ 月ばかりが冴え冴えと 






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2009/06/28

// 深海を 言葉 彷徨えり・・・






 深 海 を 言 葉 彷 徨
さまよ え り 



         
深海を 言葉 彷徨えり

告げる人 失いし言葉 深海を彷徨う



月は水面に美しく


    星々はそのまわり蒼黄金そうごん色で飾る    







深海を 言葉 彷徨えり

懐かしきは 葡萄畑の あの言葉の香り

いのち懸けた日の香り


   

深海を 言葉 彷徨えり

アァ 今は 朝なのか 夕なのか
              
とき知らず 彷徨うばかり

                       
遠く 鱗うろこ 光らせるのは

古代文字の 華やかなりし 栄光なのか







深海を 言葉 彷徨えり

抜殻となり 懐かしむは 薫る君の言葉

いのち懸けた日の 薫る君の言葉
    






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2009/03/03

// 木洩れ月夜






 木 洩 れ 月 夜 

千年樹林



八重むらさきに 谷を染める 月の光


絹の糸引く木洩れ月 かすかに届くその先に

忍んで暮らす人ひとり

なぜそこに

いつからそこに 尋ねる人もなく



夜露のような深い眼差し

もう 若くはない人だから

人の流れの中を 彷
さまよ徨ったのかも知れない

時の流れの中で 翻弄されたのかも知れない







千年樹林 泉に揺れる 月の光







昔 落人が 住んだ 隠れ里

今も 忍んで暮らす 人 ひとり

なぜここに

いつからここに

める人も 今は もういない







風の音に追われ 月の光に怯え

遠くへ

遠くへ

この世の果てへと 逃れた 都
みやこびと



恨みも 祈りも 包んで

むらさきの谷 

今も 密やかに 木洩れ月夜



恨みも祈りも包んで 

むらさきの谷 今も 密やかに 木洩れ月夜





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// 酔月のうた





 酔 月 の う た 




夜更けて 月は冴え 降りそそぐ

月に酔い 酒に酔う

今宵







風に吹かれ 風に吹かれ

風に吹かれて


草はなびく 木々はそよぐ 今宵


夜更けて 月は冴え 降りそそぐ

月に酔い 酒に酔う 今宵







風に吹かれ 風に吹かれ

風に吹かれて


草はなびく 木々はそよぐ 今宵



ざわめきは遠ざかり 憂いは遠ざかり

今宵 ひとり 月の宴


風にまかせ

心まかせ

月に酔い 酒に酔い

忘却の彼方へ 彼方へ 旅立つ今宵









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// 漂泊の果て・・・




 漂 さすらい 泊 の 果 て 



風が哭く 岬の町に
漂泊人がひとり
流れ 流れの 旅路の果て

失った幾つかの夢
幾つかの愛

遥かに ゆらめく 長い夜



嗚 呼

胸に熱い いとおしき 日々よ

遠い 遠い日のロマンスは 真夏のかげろう







 砕け散る潮騒の時代とき
こころ 行方 知れず
祈る星さえ 未だ 定まらず


寂しさよ
仄白い闇よ
夢のかけらよ
果てなき 孤独よ 孤独よ



嗚 呼

胸に熱い いとおしき 日々よ

遠い 遠い日のロマンスは 真夏のかげろう








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// 真夜中の声を聴け






 真 夜 中 の 声 を 聴 け 



真夜中の声を聴け

愛する人の声を聴け

真夜中の声を聴け

戦場の地の声を聴け

路上を 砲たまが 飛び交う

子供が泣き叫ぶ 子供が泣き叫ぶ




真夜中の声を聴け

祈る母の声を聴け

真夜中の声を聴け

戦場の地の声を聴け



神の運命さだめの手の平

罪なきあの子が枯れてゆく

夢見る幸せ 知らぬまま

涙に抱かれ 枯れてゆく



真夜中の声を聴け

祈る母の声を聴け


いつになったら止むのだろう


あの子が怯える銃声は

いつになったら止むのだろう あの子が怯える銃声は






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// 無常郷の響き






 無 常 郷 の 響 き 



風が誘うよ 風が誘うよ

ここへおいでよ
すてきだよ
とても静かなんだ

君の持っているものはここにはないよ
君が大切だと思っているものもここにはないさ

だけどすてきなんだ
だから静かなんだ

もう少し年をとったら
もう少し年をとったら 君もここにおいでよ





ここにおいでよ
ここにおいでよ

ここには確かなものがあるよ
何にも揺らぐことのない確かなものがあるんだ

それは
そう

しなやかなバランスに育まれた在るがままの営み


だから
君をつつむ靄のかたまりはここにはないよ
君を裏切るものもここにはないと思う



だから

恐れることはないんだよ

もう少し年をとったら 君もここにおいでよ

もう少し もう少し年をとったら 君もここにおいでよ






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